「Flyable Heart」感想

タイトル画面からたぬきのしっぽが生えている可愛らしいヒロインさんが出迎えてくれる、何も考えなくていい、心がふわふわ飛んでいくような作品なんだろうな、と軽い気持ちで始めました。いとうのいぢ先生の描く大変かわいらしいお嬢さんに囲まれて幸せな一時を過ごせるんだろうなって。

個別ルートに入るまでは実際そんな感じでした。たぬきのしっぽはアクセサリだったらしく作中では全く触れられませんでしたが、それ以外は大体思ったとおり。キラキラふわふわした学園生活が描かれていました。

凄まじかったのが個別ルートに入ってからです。多分この作品のテーマは「豹変」だったのでしょう。キャラクターたちが突然豹変します。いえ、何と言うか共通パートを進めているときも何となく予感はありました。「こういうキャラクターってこういう本性隠してることあるよな~」みたいな。そしたらホント目を付けていたキャラクターがみんな予想通りに豹変しました。

無能なお飾り生徒会長とか、いつも笑顔でやさしくしてくれたお姉様とか、何かと主人公を目の敵にしてくる科学者ヒロインとか「あ~よく豹変するよね、そういうキャラクター」ってなるじゃないですか。その予想通りに豹変して、もう何と言うか予定調和、様式美、そういう美しさがありました。

さて、「いつも笑顔でやさしくしてくれたお姉様」が豹変したらどうなるかって、大体アレですね。堪忍袋の緒が切れて隠していたどぎつい性格を隠さなくなって、あまりのキツさにプレイヤーが「えぇ…」となってしまうやつ。

ひざまづきなさいとか言われるやつだこれ…私ちょっとそういう性癖は…ってなるじゃないですか。それが本作では極めて丁寧に準備・加減されていて、豹変したのにかわいいわ楽しいわで大変でした。

「このヒロインを豹変させたいんですが」
「うーんでもこれ豹変させたらプレイヤードン引きしない?」
「ですよねー。でもどうしても豹変させたいんです」
「何その熱意」
「何としてもプレイヤーを引かせないようにするので豹変やらせてください!」
「お、おう…じゃあやってみて…」

みたいなやりとりがあったんじゃないかと。いえ全くの妄想ですけど。ヒロインの魅力を損なわないように周到に下準備して豹変させ、その豹変も短期間にまとめて万が一にもダメージが残らないようにした―そんなふうに見えました。性癖を抑えるの大変だったんだろうなぁって。こういうお姉様が性癖のままに豹変させて「えぇ…」ってなっちゃうやつ、よくありますから。

おかげさまでとても楽しかったです。そのまま休憩なしでこのお姉様が主役の「君の名残は静かに揺れて」をやっていこうと思えました。

「こんなの絶対難しいやつじゃん…」なのに、これを「でもそんなに大惨事にはならないだろうな」と希望を持ってプレイできるくらい、このルートは本当に楽しかったです。