マウスカーソルの自動消去機能がプレイヤーの集中を邪魔する事故を防ぐUIデザイン


こちらはクロノクロックのコンフィグ画面の、マウスカーソル消去設定です。設定秒数マウスカーソルが動かなければ、マウスカーソルを非表示にする。そういう設定ですね。エロゲにはよくあります。マウスカーソルがなければ邪魔がなくなりより集中しやすくなる―なるほど。…なるほど?

エロゲのテキストを進めるには、Enterキーを押すか、マウスでクリックします。スペースキーなどでも進められるかもしれませんが、一般的なのはEnterキーとクリックですね。

Enterキーで読み進める人にとって、マウスカーソルが画面上にあるのは単純に邪魔です。だからといってわざわざマウスを弾き飛ばしてマウスカーソルを画面外に吹っ飛ばすのも面倒くさい。それなら一定時間動かなかったマウスカーソルを自動的に非表示にすればいい。とてもよくわかっている設計意図ですね。

問題はクリックです。人類の大半は複雑なキーボードより単純なマウスを好みます。右手はマウスを握っており、必要に応じてキーボードに移動します。そんな人々はエロゲのテキストもクリックで進めるわけですが、クリックには理想と現実があります。

理想的なクリックはクリックしたいものにマウスカーソルを合わせて、地面に対して垂直に左ボタンを押し込み、そして放すものです。とても美しいクリックですね。これなら何の問題もありません。

一方で現実のクリックはずれます。肘や手首を同じ角度で維持するのは困難ですし、左ボタンもきれいに垂直に押し込んでいるわけではありません。そしたらどうなるかって、マウスがずれて、マウスカーソルもずれて、おめでとうございます。マウスカーソルが再表示されました。

このためクリックで進める人では以下のような事故が多発します。偶然一定時間マウスカーソルをずらさずにクリックできてしまったことでマウスカーソルが非表示になる→偶然はそんなに長く続かず、マウスがずれてマウスカーソルが再表示される→繰り返し。マウスカーソルが点滅してしまい集中も何もあったもんじゃない、と。

この事故を防ぐにはどうしたらいいでしょう。まず思いつくのが初期値を「無効」にするという線でしょうか。自動消去しなくなるので点滅もしません。Enter派が各自有効にすればいい。そういう考え方ですね。

ただし有効にするのがEnter派に限られないという問題があります。クリック派もこの設定項目を見たら「お、自動で消せるのか、じゃあそうだな…」とうっかり有効にしてしまいます。このとき点滅事故なんて全く考えもせず、実際に事故が発生してから微妙な気分になって無効に戻す羽目になります。

では初期値を「無効」にするのではなく「マウス操作が一切行われなかったら非表示にする」という挙動ならどうでしょう。クリックやホイール操作でもタイマーがリセットされ、クリック派ではほとんど非表示にならなくなり、点滅に悩まされることがなくなります。

「マウスカーソル邪魔だよな。消せば集中しやすくなるでしょこれ」―最初に自動消去機能を考案した人は、ホント単純にそう考えただけだろうと思います。そしてクリック派もOFFにすれば済むからクレームに発展することもなく…なんですが、今プレイしている初情スプリンクルは自動消去機能を無効にできない作品で地味につらいです。