FlyableHeartのタイトル画面に表示されるCGについて考える


こちらはFlyableHeartのタイトル画面です。8種類あります。「あぁ順番に表示するかランダムなんだろうな」と思ったら全然違う挙動で面白かったので今回はこの話をしましょう。

タイトル画面を表示する度に順番に切り替わるなら、全てのCGを見るには8回タイトル画面を表示すればいいですね。そうではなく毎回ランダムに決まるのであれば、全て見るのに掛かる回数は8回かもしれませんし100回かもしれません。もっと掛かるかもしれません。

順番に切り替わって8回でコンプリートなら何も特別なことはなく、記事を書こうとも思いませんでした。そしてランダムなら、それこそ何万回掛かるかわからず、コンプリートできないプレイヤーが発生するおそれがあり、これは不味いですね。

そこでFlyableHeartの開発陣は少し変わった方法を採用しました。

これは試しに30回タイトル画面と回想画面を反復横跳びしてみた記録です。何かやたら1と2が多く、18回目でコンプリートしています。1と2に偏ったランダムみたいですね。それで念のためにもう一度30回反復横跳びしてみたら同じ結果になりました。1回目の30回と2回目の30回が全く同じ結果になる、というのはランダムでは考えづらいですね。なくはないけど、まぁないよね。つまりランダムではないみたい。

まずどういう挙動になっているか考えてみましょう。18回目でコンプリートするまで、一見ランダムのような固定の順番でCGが表示されています。多分「あまりコンプリートに手間を掛けさせるのは不味い」という点を考慮しているんだと思います。「あまり回数を掛けずにコンプリートできるようにしたいけど、ランダムにしたい」でこうなったんじゃないかと思います。12・13回目で同じCGを連続で表示しているのもランダムっぽいですね。

さて、18回目でコンプリートしてからも順番に規則性を見出せませんが、何度試しても順番は固定でした。1から8まで順に表示するわけじゃないけど、毎回同じ順番。

多分元のデータから一定の計算手順に従って規則性のない値を生成する「ハッシュ化」的なことをやっているんだと思います。18回目までは固定で、19回目からは回数をハッシュ化してそれによって表示するCGを決めるなら、19回目は毎回4になりますし26回目は毎回1になります。ハッシュ化処理に回数を放り込むだけなので、ハッシュ化処理の詳細はさておき無限に規則性のない順番を生成できそうです。

やっていることは大体わかりました。では次に「なぜこんなことをしたのか」を考えていきましょう。

1と2が他より高頻度で登場するのは、1と2がメインヒロイン的な位置づけだからなんだと思います。積極的にプレイヤーの視界に入れて好感度を稼ぎ、1と2に力を入れたグッズ展開をすれば効率的に稼げそうです。

そして1回目が1の理由は「メインヒロインであることをアピールするため」でしょう。起動してタイトル画面が表示されたとき、そこにヒロインが1人だけいたらそれはどう考えたってメインヒロインじゃないですか。これが4や6だったら「ん?」ってなりますね。

かわいいですが、だからといってこれがメインヒロイン格かというと違いますね。7とか最早男性向けエロゲかどうかという根幹から疑わなきゃいけなくなります。また2、3、6、8は笑顔でないのもダメです。作品の雰囲気と合いません。そういうワケで初回起動時に1が表示され「このヒロインがメインヒロインか~かわいいなぁ」という印象を獲得してゲームを開始します。掴みは完璧。

でもタイトル画面が毎回同じだと面白くないので、表示の度に切り替えるようにしたい。しかし順番が固定では「前のヒロインは推したいヒロインで、後ろのヒロインほど…」という印象を与えかねません。わざわざ公式サイトのキャラクター紹介ページを相関図形式にして順位を意識させないようにしたのに、これでは努力が水の泡です。そこで「一見ランダムに見える固定」です。

  • コンプリートにそれほど手間が掛からない
  • プレイヤーに順位を意識させない
  • ランダムの面白さを感じられる

という、色々な問題を解決するための答えだったのでしょう。「1のメインヒロイン固定でよかったのでは…?タイトル画面のCGに面白さとか求めなくてもいいのでは…?」などとは考えてはいけないのでしょう。

さて、もう一つおまけで回想機能についても見ていきましょう。

本作では1ルートクリアする前から回想機能が解放されています。これもランダム表示を考慮した設計かもしれません。というのも、本作のタイトル画面のメニューボタンのうち、ゲーム画面に移動せずにタイトル画面を切り替えられるボタンがこの「エクストラ」しかないんですね。「つづきから」「システム設定」ではロード画面や設定画面がタイトル画面の上に重ねる形で表示され、閉じてもタイトル画面は更新されません。

そうすると「タイトル画面を表示する度にランダムで切り替わるCG」をコンプリートするために反復横跳びするときにとても面倒です。「ゲーム画面に移動する→設定画面などを開く→タイトルにもどるボタンを押す」という大変な手間が掛かってしまいます。こりゃ不味い。しかし回想画面は完全に別の画面に移動するので、タイトル画面に戻ったときにタイトル画面を更新できます。

「反復横跳びの手間を減らすために、回想機能を最初から解放しておいた」というわけです。回想ボタンをクリック→右クリック→回想ボタンをクリック→…」で反復横跳びできます。とても便利!

FlyableHeartの前々作、Chu×Chuアイドるのタイトル画面はランダム表示でないのに回想機能が最初から解放されていたので、単にそれを継承しただけかもですけど。むしろその線が濃厚ですけど。なんだよ反復横跳びの手間を減らすためって。

それと今更ですけどFlyableHeartのタイトル画面に表示されるCGって本当に8種類なんですかね。30回くらいしか反復横跳びしていないので「実は100回目には9が表示される」とかだとわからないんですよね。どれだけ先にあるかもわからない、それどころか存在するかもわからないCGのために反復横跳びしたくはないですけど。

こう…挙動から設計意図を推測、というか妄想するのって楽しいですよね。正解に辿り着きたいわけではなく、妄想するのが楽しくてやっているところがあります。