「テキストウィンドウの文字数」のUIの話


こちらはFlyableHeartのゲーム画面です。かわいらしいテキストウィンドウに、1行あたり25文字表示されています。今回はこの文字数の話をしましょう。


こちらはFlyableHeartの続編、君の名残は静かに揺れてのゲーム画面です。1行あたり24文字表示されています。1文字減っていますが、まぁ似たようなものです。

画面の大きさはFlyableHeartの横幅が800ピクセル、君の名残は静かに揺れては960ピクセルです。テキストウィンドウの横幅はどちらも大体520ピクセルくらいでした。

画面が広くなったらその分1行あたりの文字数も増えそうですが、増えるどころかむしろ減っています。不思議ですね。なぜかというと「1クリックで表示されてもやる気が死なない文字数」という制限があるためです。

プレイヤーは軽い気持ちでエロゲをプレイします。そんなプレイヤーに対して1クリックで40文字×4行=160文字表示すると、やる気さんが死んでしまいます。実際に図を見てみるとわかりやすいです。

「あ、これ死ぬ」ですね。これを防ぐには、それこそFlyableHeartのように75文字(25×3)程度にする必要があります。

でも75文字程度なら、40文字×2行にしてテキストウィンドウの縦幅を小さくする、という線も考えられます。それなのにそういう作品はあまり見ないですね。大体3~4行です。これは「ウィンドウ端まで視線を動かしてほしくないため」です。エロゲはウィンドウの中に描画されるので「ウィンドウの外側」というものがあります。

テキストがウィンドウ端まで敷き詰められていると、行末に到達したときにウィンドウの外側が視界に入って、プレイヤーの集中を邪魔してしまいます。それを防ぐために、プレイヤーにとって無意味な飾りなどで埋め尽くして「ここから先には何もないよ」とアピールして、画面の真ん中辺りを反復横跳びするように設計しているわけです。

  • 改行が多いと、テキストウィンドウの縦幅が大きくなりCGを隠してしまう
  • 1行あたりの文字数が多いとウィンドウの外側が見えて集中の邪魔になる
  • 1クリックあたりの文字数が多いとプレイヤーのやる気が死ぬ
  • 1クリックあたりの文字数が多い方が表現できる幅が広がる
  • そもそもウィンドウの大きさと読みやすい文字の大きさという物理的な制限がある

といった事情から捻り出された結論が25文字×3行=75文字なんだと思います。

ここでもう一つ、横幅が大きい猫忍えくすはーとのゲーム画面を見てみましょう。

1行あたり33文字です。多いですね。横幅が大きいのでそれでも左右に十分な空白を確保できています。またこのテキストウィンドウには2行表示してもまだ1行分の空きがあり、3行表示できるだろうことが読み取れます。

そうすると33文字×3行=99文字、160文字よりはマシですが75文字と比べると多めです。1クリックで99文字もの文字に襲われたら、やる気さんは耐えられるのでしょうか。…と思ったらなんと猫忍えくすはーとには3行のテキストがないみたいです。隅々まで探したわけじゃないですけど、探した範囲では見つかりませんでした。

「99文字表示できるスペースがあること」ではなく「実際に99文字表示されること」が不味いなら、テキストを2行66文字以内に収めればいい。そういう考え方ですね。66文字ってそれじゃ75文字より少ないじゃないですか。

33文字までなら改行動作なしでスムーズに読めて、大量の文字に襲われてやる気が死ぬこともない、快適に読み進められる設計ですね。とてもよく考えられたUIだと思います。

では最後に信天翁航海録のゲーム画面を紹介してこの記事の締めにしようと思います。

こちらが1クリックで表示された文字数です。よろしくお願いいたします。私は途中で心が折れて投げました。