ランスシリーズで学ぶ回想画面のUI設計

回想画面には一度見たCGやシーンのサムネイルが並んでいて、プレイヤーはその中からもう一度見たいものを選んで再生します。大体どの作品にも実装されている機能ですね。

最近ランスシリーズを最初からやっていて、その回想画面が面白かったので今回はランスシリーズの回想画面の話をしましょう。

回想画面のUIの基本

一般的な学園ラブコメにはヒロインが数人いて、それぞれについて多数のCGが用意されています。しかしエロゲのゲーム画面の広さは限りがあり、サムネイルが小さすぎると見づらいこともあって、1画面に表示できるサムネイルの数には限界があります。5 × 5 = 25個も並んだらキツいんじゃないでしょうか。

じゃあ26個目以降はどうするか。2ページ目にすればいいですね。そんなわけで100個あるサムネイルを4ページに分けて並べました。では目的のサムネイルを探してみましょう。…どこにあるんでしょうね。運がよければ1ページ目で発見できますが、最悪の場合4ページ目まで目を通さなくてはなりません。

これは不味いということで考えて、思いつきました。ヒロイン毎にページを分ければいい。ヒロイン5人で20個ずつサムネイルがあるとしても、目的のサムネイルが誰のCGかわかっているので、すぐにそのサムネイルが並んでいるページに移動できます。

※ランスシリーズを除く

一般的な学園ラブコメなら「ヒロイン毎のページ分け」でいいんですが問題はランスシリーズです。ランスシリーズは「ヒロインが多数いて、それぞれのCGが少ない」という特徴があります。「ヒロイン毎のページ分け」が機能するには「ヒロインが数人で、それぞれについて多数のCGが用意されている」必要があります。

ランスシリーズで「ヒロイン毎のページ分け」をやるとヒロインボタンがものすごい数になり、しかもそれをクリックしたときに表示されるサムネイルが多くて5個くらいという悲惨な事態になります。多数並ぶのがサムネイルからヒロインボタンに変わるだけです。

そういうわけでランスシリーズの回想画面は一般的な学園ラブコメのそれとは違う方向に進化しました。見ていきましょう。

ランスシリーズの流れ

発売順で見ていきます。

5D


5Dは「一本道の短い作品」という特徴があり、サムネイルが30個しかないので、サムネイルを小さくして全部1画面に収めています。サムネイルが小さすぎて何が何だか。

6


大規模作品でサムネイルの数が220個。それで1ページに20個のサムネイルを並べて11ページの回想画面になりました。最悪11ページ探さなきゃいけない地獄のような状況です。

ランスシリーズの特性上、ヒロイン毎にページを分けるわけにもいかず、ほとんど法則性を見出すことのできないデタラメな並び方になっています。目的のCGを探すのに、11ページとは言いませんがかなりのページを探さなきゃいけません。

一番の敗因は「ランスシリーズであること」ですが他にもいくつかあって「CGモードと回想モードを合併したこと」もマズいです。CGの用意されているシーンがほぼ全て回想できるようになっており、このため11ページにも渡る巨大な回想画面になってしまっているんですね。

一般的な学園ラブコメのように回想機能が「Hシーンを回想するための機能」ならここまでのページ数にはならなかったはずなんですよね。回想機能を使うのは8割方抜くためのおかずを求めているプレイヤーなので、そうしても多分怒られません。

またページボタンを押すことでしか次のページに移動できないのもヤバいです。ページボタンがそれほど大きくなく密集していて押しづらいのに、頑張って押してもそのページに目的のサムネイルがあるとは限らず、なければまた次のページボタンを頑張って押さなくてはならず割とクソ。

7


7もまた大規模ですがサムネイルの数は104個。6の半分に抑えられています。

ページという概念が消えてなくなっていますね。6のページボタンがよほど不評だったのでしょうか。スクロールで移動するようになっています。

ホイールを1回動かすと1行スクロールします。1画面分スクロールするのにホイールを4回動かさなければならないわけですが、誰もおかしいと思わなかったのでしょうか。だってスクロールするということは「現在画面に表示されている中には目的のサムネイルが存在しない」ってことじゃないですか。ホイール1回で4行移動でいいじゃないですか。そういうワケで「6よりマシだけどこのスクロールはイマイチ使いづらい」といったところです。

それからサムネイル毎に番号が振られるようになりましたね。これまでは1画面のみだったりページ分けされたりしていたので「3ページ目の2段目の右端」と言えばよかったんですが、今回からはそういうワケにもいかないので、「26番」と言えるように番号を振ったのでしょう多分。

攻略情報をやりとりにおいて、この番号がないと「上杉の右のCGはどうやったら見られますか」みたいな質問になります。すると「上杉のCG」を見た人でないと質問を理解できないという何とも言い難い状況になってしまいます。「武田のCGは見たけど上杉のCGは見ていない人」はこの質問に答えられないんですね。運良く「2枚とも見た人」がこの質問を見て回答する気にならなきゃいけません。絶望的ですね。

そうすると「質問しても回答が返ってこない、攻略情報のやりとりが盛んでない、あまり人気のない作品」みたいな印象になってしまいます。不味いですね。

そういうワケなのかはわかりませんが、以降の作品もページ分けしていない場合は番号が振られています。

ちなみに番号が全て3桁になっているのは、今回は104まで番号を振る必要があるので、89~104の画面が「2桁の番号と3桁の番号がある」というちょっと美しくない見た目になってしまうのを回避するためです多分。

8


スクロール方向が縦から横に変更されました。縦スクロールはインターネットなどで慣れ親しんでいるんですが、横スクロールは馴染みがないので違和感がすごいです。

ところで「CGのみ」のボタンが消えましたね。「回想付き」ボタンをクリックした場合は回想、他の部分をクリックした場合はCGを再生します。7では「上半分をクリックしたらCG、下半分をクリックしたら回想を再生する」という挙動だったので、「ボタンを押していないのに押したことになる挙動」がプレイヤーを悪い意味で驚かせてしまったんじゃないでしょうか。

CGならまだしも回想はスキップしてもそこそこ時間を掛けないと脱出できないので「押していないのに押したことになる挙動」で再生するのは不味いです。

01


CGモードと回想モードが分離しました。けどこれ左下に表示がある通り回想モードですね。何かHシーンとは思えないサムネイルが並んでいますね。はい。結局回想モードは全てのCGについて回想できるようになっておりHシーン専用機能ではありません。まぁいいや。54個しかサムネイルがないんですから大した問題ではありません。

01で目立つのはホイールでページ移動できるようになっている点です。7ではホイール1回で1行しかスクロールせず、頑張ってホイールを転がす必要がありました。それがページ毎になったことで快適に移動できるようになっています。いやぁホイールで移動できるって便利ですね。

ところでノートパソコンってホイールありましたっけ?

03


やっべノートのこと忘れてたわwwwということで03ではノートパソコンでも快適に利用できるよう機能が追加されています。「<<」「>>」ですね。このボタンをクリックするかマウスカーソルを合わせてEnterキーを押すと、前後のページに移動できます。これでホイールの利用できない環境でも、一度マウスカーソルを合わせるだけで全ページ横断できて快適です。

「ホイールでスクロールできること」にノートパソコン利用者は気付かないはずなので
「01で快適になったはずなのにまだ使いづらいって苦情が来てるんだけど」
「どういう人からの苦情?」
「ノートでプレイしてる人みたい…あ、ノートってホイールないじゃん…」
みたいな会話があったのかもしれません。

9


7→8→01→9→03の順で発売されたので01以上03未満の回想画面なのかなと思ったら違いました。8の横スクロールが不評だったのか縦スクロールに戻っています。8の回想を再生する場合のみ専用のボタンを押す形式は続投。

なぜ01の回想画面から戻っちゃったのかはよくわかりません。「ページボタンが多くなりすぎると十分な大きさを確保できないから、12個 × 8ページを超える枚数ではページ分けしない」みたいなルールがあるのでしょうか。ホイールを転がせばいいだけですけど。

まとめ

「ヒロイン毎のページ分けが通用しない」「長く続いているシリーズもののエロゲ」という特徴を持ったランスシリーズ。ちょうどいい題材だったので順を追って見てきました。

「これはどうしてこうなっているのか」と考えてみると、普段あまり気にしないところも色々考えられているとわかって面白いですね。開発者の方に直接教えてもらったわけではないただの妄想ですけど。