神様ヒロインが信仰を失って力が弱まり消滅するしくみ

神様ヒロインって大体「人々からの信仰が失われたことで力が弱まり消滅する」という展開になりますよね。特に和風の神様ヒロインが出てきたら十中八九あるだろうなと身構えるくらいある。むしろ消滅しなかったら驚くくらいある。ということで今回は「なんで信仰がなくなると弱くなって消えるの?」という話です。

まずいわゆる神様なんてものは実在しないものとして話を進めます。神様は「人間には見えない存在であり、世界のどこかから人間のことを見ている」として広く普及している、とても便利な脳内の道具です。神様の主な用途は「人間に道徳を与えて生き方を示す」。神様は人間の行いに応じて様々なものを返してくれる存在として

  • 良い行いをしていれば神様がきっと見ていてくれて、いずれ幸運を恵んでくれる
  • 良い行いをしてきたからこそ、最悪の事態を回避してこの程度で済んでいる
  • 悪い行いをしていれば神様の怒りに触れ、いずれ天罰が下る
  • 悪い行いをしてきたからこそ、現状のような悪い状況に陥っている

のように天恵・天罰をもって人間を律します。ぶっちゃけこんなの占いのしくみと同じで、大吉を引いた後で宝くじが当たったら「大吉のおかげ」になるアレですけど。

車やパソコンにブランドがあるように神様にも種類があり、それが仏教だったりキリスト教だったりします。神様ブランドは何千何万年の時の試練、その地域の特色や人々の好みによる選別を経て生き残ったものが、その地域の人々の中に根付いています。

神様を使えば信者にその地域に適したふるまいをさせられるので、神様を信じていなくても平和を維持するために利用することもあります。神様のおかげで警察や軍が今の規模で済んでいるところがあります。

 

さて、神様は物理的には存在しない脳内の道具であり、誰かが「○○神は存在する!」と信じている限り存在します。脳内に。

ただし実在しないからと言って侮ってはいけません。
私「殺人なんて○○神に怒られるから絶対しない」
あなた「天罰が怖いから俺も殺人なんてしないよ」
となれば、物理的には存在しない神様ですが、殺人事件を未然に阻止するという確かな効果を発揮しています。これが神様の力なんですね。

では次の場合はどうでしょう。
私「殺人なんて○○神に怒られるから絶対しない」
あなた「○○神なんて存在しねぇよ(笑)」
私の中に存在する○○神は力を持って殺人事件を阻止していますが、あなたの中の○○神は信仰されておらず力を持たないため、殺人事件を阻止できていません。これが神様が信仰を失うことで力が弱まるしくみです。

○○神を信じていないあなたは、まぁ近い将来○○神のことなんて忘れてしまいます。当然子孫に伝承せず、いずれあなたの一族の脳内から○○神は消滅します。これが世界各地で同時多発して信者が減り、「○○神の話をしても通じない人」が増えていきます。

そして私も、「○○神がいると思っていたけど、あなたの話を聞いて思い直しました。神なんていないよね!」となればあなたと同じ道を辿ります。人間は自分1人では自信を保てない生き物ですから、周囲の人々が○○神を信じていないとすぐに「○○神を信じている自分」の自信を失ってしまいます。

そうして誰も○○神のことを知らない状態になると、神様は元々物理的に存在しない脳内の存在でしたから、その脳内にも存在しないのはつまり完全に消滅したことになります。神様の死。

有名な(広く信仰されている)神様は信者に物理的な宗教施設や文書という第二の脳を作らせてその存在をより確かなものにできます。しかしそれも所詮は人間が作るものなので維持管理しなければいずれ風化します。そして維持管理の原動力になるのも信仰心なので「お金があればお金を使って更にお金を稼げる」みたいな感じですね。

また有名な神様は、その教えの中に「子孫を残しやすくする教え」が含むものです。神様の教えに従って行動すると自動的に子孫を残せて、神様のおかげで子孫を残せたので子孫にも熱心に神様のことを言い伝えて、そうして神様自身も長く生き残るわけですね。

 

神様は多くの場合寿命の設定がないか、人間より遥かに長いものとされています。これは子孫に語り継がれたり他人に布教したりでいくらでも生き延びられるためです。っていうか死んじゃったら困りますしね。死んで天恵・天罰をもたらせなくなった神様とか信仰を維持できずに消滅まっしぐらです。そういう都合もあり、神様は長寿命です。

ついでに、神様は基本的に殺せませんが、より力の強い神様の手によって殺すこともできます。神様は脳内の存在なので、誰の脳内に存在するかわかりません。なので「信者を皆殺しにして無理矢理神様を消滅させる」というのは極めて難しい。少なくとも個人レベルでは不可能です。

しかしこれが組織レベル、国家レベルになると不可能でもなくなります。○○教信者数万人で××教信者の多い地域・人種を(実際に信者かどうかはとりあえず無視して)抹殺することで、大きく信仰心を削いで、運がよければ完全に消し去ることも可能です。ついでにこのとき宗教施設や文書も破壊しておくとより効果的。基本的に人数(信者)の多い方が勝つので「信仰されている強い神が信仰されていない弱い神を殺すことに成功した」という構図になります。

 

さて、ではそんな神様の生い立ちの話をしましょう。神様はお母さんのお腹から生まれるわけではないのに、じゃあどこから生えるんだって話です。

神様は元々は

  • ただの妄想
  • 実在のすごい人

のいずれかです。

私たちが普段エロゲで感動のあまり涙を流すことからわかるように、妄想から生まれた物語が人間に強烈な影響を与えることがあります。これがそのままうっかり神様にまで昇華してしまったパターンが「ただの妄想」。現代で普及している大手神様の元として伝えられている書物も、もしかすると元を辿れば変人が酒に酔った状態で適当に書いたもの…だったりするかもしれません。

もう一つは実在するすごい人が噂になって尾ひれが付いていつの間にか神様になってたパターン。元々の人間の寿命はどう頑張っても200歳を超えませんが、魂が死に際に飛び出すなどして寿命問題を解消して神様の仲間入りを果たします。

抜きゲーでビッチヒロインに対して冗談半分で
「あいつ学園中の男全員を食ったって話だぜ」
「ぎゃははは確かにやりかねんな」
などと言っているモブキャラクターを見掛けます。あれも一種の神様誕生の瞬間です。ビッチ神が元のヒロインから一人歩きを始めていますね。そのうち「悪いことしてるとビッチ神に食われるぞ」とかいう神話に発展していつの間にか一大宗教になっているかもしれません。

 

ところで脳内にしか存在しないはずの神様ヒロインが肉体を得て主人公とセックスするエロゲって何なの?という疑問も浮かびますが。それはまぁエロゲなので…でもいいんですけど。信仰心を集めると絶大な力を持つ→力があれば何でもできる→じゃあ肉体くらい軽く得られるだろ→美少女神様ヒロインのできあがり。

人間の行動を律することしかできない神様ですが、信者の脳内に住み着いて宗教施設という物理的なものを作らせることはできるので、マッドサイエンティストの脳内に住み着いて肉体を生成する技術を開発して…みたいなことならいずれできるようになるかもしれません。何なら信者カップルから生まれた子を神様の生まれ変わりということにもできますから、割と現実的な話かもしれません。

 

神様についての妄想を書いてみました。今度神様ヒロインが信仰を失って力が弱まり消滅しそうになったら「あーこういうことなのかなぁ」などと思い出していただければ。