対戦ゲームの「強キャラさえ知っていればいい」設計

対戦ゲームの対人戦は大体強キャラ同士の戦いになります。だって強いんだもん。だけどそれじゃいつも同じような強キャラとしか戦えないじゃないですか。もっと弱キャラも活躍できるように調整しろよ…!

いえ、今の調整で正しいです。強キャラ数種類しかいない環境でいいんです。

対戦カードゲーム、特に歴史のある遊戯王などはカードの種類が大変なことになっています。あまり勝敗にこだわらないフリー対戦では「え、それ知らないカードなのでちょっと見せてもらっていいですか」という事態が頻発します。

フリー対戦であればそれは楽しい体験です。ルール的には正しいのに全く理解できない動きでよくわからないうちに場を制圧され、いつの間にか負けている。そんな「知らないカードとの出会い」はカードゲームの醍醐味です。

ただしそんな悠長なことを言っていられるのはフリー対戦だから。大会までこの調子ではゲーム性が崩壊します。「本当に何もわからないまま対戦するゲーム」ってもう「とりあえず突っ込んでみて負けたら諦めよう」以外ないので。初めての格闘ゲームでコントローラーをがちゃがちゃするアレと変わりません。

強キャラ数種類環境なら対戦相手が使ってくるカードは数十数百種類で済み、全てを把握するのもそれほど難しくありません。「このカードを使ってきたということは、手札にはアレが潜んでいるかもしれないから警戒してこういうふうに立ち回ろう」という「読み、警戒する」プレイングが可能になります。

裏面しか見えないカードは相変わらず不明ですが、ある程度候補が絞れます。大会の流行を予測してあらかじめ対策カードを入れておくこともできます。こういうのは強キャラが数種類しかいない環境だからできる遊び方です。

 

しかし結局大会で使われるのが強キャラ数種類なら弱キャラなんて作らなければ手間が省けますってダメです。ちゃんと手間暇掛けて弱キャラも用意しなきゃいけません。対戦ゲームのプレイヤーの多くは「ほとんどフリー対戦しかしないプレイヤー」なので。大会なんて出ないんですよ。

そういう彼らにとって大事なのはフリー対戦の楽しさであり、それは弱キャラが充実していないと発生しません。毎回同じような相手と対戦し続けていたらすぐに飽きてしまいます。飽きたとき、「他に楽しそうなキャラクターいないかな」と眺めて見つけられなかったら、その作品を辞めてしまいます。辞められてしまっては新しいカードを発売しても買ってもらえません。そういうワケで弱キャラもやっぱり必要です。

 

そんなこんなで「強キャラと弱キャラがいて、大会では強キャラしか使われない」は「ゲーム運営側の調整不足」ではなく「意図的にそのように調整されたもの」です。多分。

自分が楽しくプレイしているゲームの運営の頭が悪いって嫌じゃないですか。頭悪い奴に踊らされている自分は何なんだよってなります。だから「偏った環境」を「運営によって意図して作られた環境」ということにして、気持ちよく踊りましょう。